校長室より

令和6年度 第77回卒業証書授与式 校長式辞

 

式辞

  校門をくぐった先に紅白の梅の香り漂い、木々の蕾もほころび、この箭弓の杜辺に春の息吹感ずる今日の佳き日に、御来賓並びに卒業生保護者の皆様の御臨席の下、埼玉県立松山女子高等学校、令和6年度 第77回卒業証書授与式をかくも盛大に挙行できますことは、卒業生はもとより在校生そして私たち教職員にとってこの上ない喜びであります。

  本日、御臨席を賜りました御来賓のPTA後援会の皆様には、日頃から本校教育に御理解と御協力を賜り、さらに本日巣立ちゆく卒業生の門出に華を添えていただきましたことに心より御礼申し上げます。

  また、保護者の皆様におかれましては、御息女の今日のこの成長した姿に感慨もひとしおのことと存じます。御卒業まことにおめでとうございます。

 

 只今、卒業証書を授与しました308名の卒業生のみなさん、卒業おめでとう。

本校所定の教育課程を無事終了し、めでたく卒業の日を迎えることができたのは、一人一人がたゆまぬ努力を積み重ねてきた結果であることは言うまでもありません。その努力に改めて敬意を表します。よく頑張りました。

  同時に、その頑張りを陰で支えてくれた周囲の方々への感謝の気持ちを決して忘れてはなりません。特に保護者の支えなくしては本日を迎えることはなかったはずです。その無償の愛に対して、今日は是非とも自身の言葉で感謝の意を伝えてみてはどうでしょう。少し気恥しいかもしれませんが、気持ちを言葉で伝えることはとても大事なことです。

  また、手前味噌になりますが、三年間叱咤激励を続けた担任や教職員の存在も忘れないでほしいと思います。口うるさく、うっとうしいと思ったこともあるのではないかと思いますが、君たちにとって耳障りなことを言ってくれる人が、実は一番心配してくれている人だということを心の片隅に留めておいてください。

  私は、今年度着任し卒業生のみなさんとは1年間でしたが、校長として見守ってまいりました。始業式や終業式。また、松女祭や体育祭。さらには、委員会や部活動の用事で校長室に来てくれた時など、みなさんと接する機会は多くはありませんでしたが、校長なりにみなさんを思い、メッセージを発してきました。本日は、卒業生のみなさんに餞として、最後にメッセージを二つ送りたいと思います。

 

 1つ目は、「「凛として輝く」に自信を持ってほしい」ということです。

 今日、グローバル化、深刻な人口減少、気候変動、国際社会の混乱など、困難な課題の多い時代となりました。また、AIやICT技術が高度に発達した「Society5.0」の到来により、社会が劇的に変化することは明らかです。みなさんは、今まさにその真っただ中にいると言えます。今後、その課題多き時代と激しい変化に戸惑い、悩み、迷うことがあるかもしれません。

  しかし、そんなときは、松女の魂ともいうべき言葉「凛として輝く」を思い出してほしいと思います。この言葉には、知性あふれ、強い芯があり、品格を身に付けた人物に成長するという意味があり、みなさんはこの松山女子高校でこの言葉を胸に、三年間、勉強に部活動に打ち込んできたのです。ですから、みなさんの体の真ん中には、この「凛として輝く」が柱のように通っているはずなのです。

 そして、みなさんは決して一人ではありません。本日、ここに同じく「凛として輝く」を柱にした308人がおりますし、さらにこの精神受け継いだ二万六千人もの先輩方が皆さんの行く先で待ってくれています。

 仲間もいます。「凛として輝く」も柱になっています。そのことに自信をもって進んで行ってほしいと思うのです。

 

 二つ目は、これは以前にも話したことがありますが、「主体的な学びの実現」ということについてです。

 これは、本校の重点目標にも掲げているものですが、単に学校の中の目標にとどまらず、社会で生きていく上でも重要になってくるものですので、もう一度話しておきたいと思います。

  「学びというものは、自ら主体的に取りに行かなければならい、受け身ではダメ」と始業式や終業式で話したことがあったと思います。そして、それを「好きこそものの上手なれ」と言い換えたと思います。好きになったことなら、いくらでも時間を費やせるし、また、苦労を感じないし、むしろやっていて楽しい。この境地が学びの真髄なのです。今から七百年以上も昔の吉田兼好の言葉です。

  卒業生のみなさんの目の前に広がる世界は、穏やかな凪ではないかもしれませんが、受け身ではなく主体的に、そして「好き」になりながら力を発揮していってほしいと願っています。きっと人生が豊かになることと思います。

  以上、餞として2つお話ししました。

 

 結びになりますが、御案内のとおり、みなさんが巣立ちゆくこの松山女子高校は、来年度創立百周年を迎えます。大正15年の開校以来、大正、昭和、平成、そして令和と百年もの間、勤勉、勇気、気品、誠実、忍耐、感謝といった変わらぬ価値を大切に受け継いできました。卒業生のみなさんもその一人となるのです。

  「松樹千年の翠」。松の樹は常緑樹ですから百年、千年と常に緑を称えてくれるという意味です。禅の歴史を綴った11世紀中国の「天聖広燈録」の一節で、茶道でよく用いられる言葉です。本校が百年もの間、受け継いできた変わらぬ価値というものは、この松の翠そのものです。

みなさんの卒業後も、松山女子高校は「凛として輝く」と松の翠のように「変わらぬ価値」を、次なる百年、そして千年と受け継いでいく所存です。残る教職員一同、そのことをみなさんにお誓いいたします。

 

 それでは、卒業生のみなさん、いよいよ別れのときです。卒業生のみなさんの幸多き未来を心より祈念して「式辞」といたします。

 

 令和七年三月十三日

           埼玉県立松山女子高等学校長 黒田 勇輝