校長室より

校長室より

令和7年度 離任式 校長挨拶

【令和7年5月2日開催】

 皆さん、こんにちは、校長の黒田です。

 今日は、この春の人事異動により本校を離任された先生方をお送りする日です。これまで本校の教育に力を尽くしてくださった先生方に、心からの感謝と敬意を表したいと思います。

  上級生の皆さんの中には、授業や部活動などで直接ご指導いただいた先生もいらっしゃるでしょう。一方で、1年生の皆さんにとっては、まだ お会いする機会もなかった先生方かもしれません。これから、離任される先生方から、それぞれお言葉をいただきます。それぞれの先生の最後の授業ですので、よく聞いてほしいと思います。

  上級生は知っていると思いますが、私は茶の湯・茶道をやっておりまして、その道の教えで大切にされている「日日是好日(にちにちこれこうじつ)」という言葉があります。どんな一日にも意味があり、価値がある。思い通りにいかない日であっても、それを丁寧に受け止めることで、自分にとっての「良い日」とすることができる——そんな教えです。

  今日という日も、私たちにとって大切な「好日」です。別れは寂しいものですが、それぞれの道を歩まれる先生方から教えを請い、感謝を伝えるこの時間は、私たちの心を育てる尊い一日です。

  そしてもう一つ、茶道の心得としても知られる「一期一会(いちごいちえ)」という言葉。今この瞬間、この人、この空間と出会うことは、もう二度と同じ形では訪れません。その出会いを大切にし、真心で向き合うことの大切さを教えてくれます。

  1年生の皆さんも、今日ここで見送りの時間を共有することが、すでに一期一会の出会いであり、学びです。どうか、皆さんもまた「日日是好日」の心で、日々を大切に歩んでいってください。

  それでは離任される先生のお話をしっかり受け止めてください。

  先生方、どうぞよろしくお願いいたします。

 

令和7年度 第80回 入学式 校長式辞

式辞

  開校当初からの校門先の染井吉野も今ぞとばかりに咲き誇り、校章由来の常緑三本松も本校の弥栄を称える春爛漫の今日の佳き日に、御来賓並びに新入生保護者の皆様の御臨席を賜り、埼玉県立松山女子高等学校第八十回入学式をこのように挙行できますことは、本校にとってこの上ない喜びであります。心より御礼申し上げます。

  只今、入学を許可しました三百十八名の新入生のみなさん、入学おめでとう。在校生並びに教職員一同、みなさんの入学を心から歓迎いたします。

 また、保護者の皆様におかれましても、御息女の入学、誠におめでとうございます。心よりお慶び申し上げます。

  本校は、「凛として善美に輝く」人材を育成することを校是として、 全教職員が一丸となって取り組んでおります。在校生も勉学に部活動に主体的に取り組み、自立に向けて日々自らを磨いております。本日より三年間お子様の成長の支援を精一杯つとめさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

  本校は、大正十五年に「松山町立埼玉県松山実科高等女学校」として開校し、今年度創立百周年を迎えます。卒業生は二万六千人を超え、代々の先輩方が築き守り抜いてきたその伝統と誇りを新入生のみなさんは受け継ぐことになります。

  十一世紀、中国で書かれた禅の歴史書「天聖広燈録」の一節に「松樹千年の翠」という言葉があります。常緑樹である松の樹は百年も千年も翠を称えているという意味です。

  千年変わらぬ松の翠とは、正に本校が百年もの間受け継いできた勤勉、勇気、気品、誠実、忍耐、感謝といった変わらぬ価値そのものです。記念すべき創立百周年の入学生として是非ともその変わらぬ価値を全身全霊でつないでいっていただきたいと思います。

 

 さて、いよいよ希望に満ちたみなさんの高校生活が始まります。伝統の松山女子高校の生徒であるという誇りと自覚を胸に、是非とも三年間の高校生活を充実させてください。私からは、みなさんが高校生活を充実させるために、これからの指針となることを2つお話しします。

  一つ目は、本校が大事にしている「凛として輝く」という言葉について、その意味を示しておきたいと思います。

  「凛として」という言葉には、「凛々しい」とか「しっかりしている」といった力強い意味があります。つまり、「凛として輝く」とは、しっかりと誇りをもって自分自身で輝くということです。どこで輝くのか、それは卒業後の「社会」です。

  みなさんは、本校で自身を磨き、卒業後の社会でしっかりと胸を張り、一人で凛々しく輝くべき人材なのです。3年間の高校時代というのは、そのための準備期間、リハーサルということです。

  このリハーサル期間に社会で通用する品格と、どこへ行ってもくじけない自信と誇りを身に付けてほしいのです。そして、それは一人の自立した人間になる道のりでもあります。

  みなさんは、9年間の義務教育を終え、自ら松女での新たな学びの道を選択したのです。決して与えられたものではないのです。その責任というものを自覚するか、しないかは大きな違いです。凛として輝けるよう、自らをしっかりと磨いていってください。

  保護者のみなさまに申し上げます。御息女は本日より義務教育を終えた高校生です。いつまでも「可愛い、可愛い」ばかりの子供ではありません。保護者のみなさまにもしっかりと自立を促していただかなければなりません。どうかよろしくお願いいたします。

  2つ目は、「母校となる松女を全力で好きになれ」ということです。

 人は自分が好きになったことなら、どんどん吸収するものです。やらされるのではなく、自ら進んで取り組むようになります。

  そうなれば、もはや周りがやめろと言っても誰も止められません。「受け身」ではなく、「能動的」な状態です。「好き」という状態は、言い換えると「能動的」「主体的」とも言えるかもしれません。

  「好きこそものの上手なれ」という言葉があります。七百年以上前の吉田兼好の言葉です。この言葉は「主体的・能動的に取り組むと成長する」という意味なのです。みなさんには、三年間の松女での生活を丸ごと好きになってもらい、大いに成長していってほしいと思います。

  幸いに、この松山女子高校は、地域の方々からも長きにわたり、深く深く愛していただいております。教職員もしかりです。そんな愛情に包まれながら、みなさんも「松女を全力で好き」になり、「好きこそものの上手なれ」を体現してください。

  みなさんの入学に際し、これからの指針として、二つお話ししました。一つ目は、「凛として輝く」の意味と自立について、二つ目は、松女を全力で愛して、「好きこそ物の上手なれ」の体現をという話でした。

 私たち教職員は、全力でそれをサポートしてまいります。

 

 重ねて保護者の皆さまに申し上げます。本日から三年間、責任を持ってお子様をお預かりいたします。

 家庭教育と学校教育との関係は、車の両輪とよく言われます。家庭と学校がそれぞれの役割をしっかり果たし、協力・連携し、教育に当たることが、何よりも大切なことは、言うまでもありません。

 

 私たち教職員一同、御期待に沿えるよう、一所懸命に努力いたします。是非とも学校を信頼していただき、家庭と学校との風通しを良くしながら、お子様の成長に向け、一緒に取り組んでいきたいと思いますので、何卒、御支援・御協力をよろしくお願いいたします。

 

 結びに、新入生のみなさんがこの伝統ある松山女子高校の生徒として、「凛として輝く」人材になるべく充実した三年間を送られんことを大いに期待して、私の式辞といたします。

 

 令和七年四月八日

         埼玉県立松山女子高等学校長 黒田 勇輝  

 

令和7年度 第1学期始業式 校長講話

 

 

 

 

 

 

 

 

■2年生、3年生のみなさん、おはようございます。4月になり、みなさん一つ学年が上がりました、進級、おめでとうございます。

 ■さて、みなさん御存知のとおり、今年度・令和7年度は本校創立百周年という記念すべき年です。卒業式・終業式でも述べた「松樹千年の翠」。百年もの長き間変わらず、守り受け継いできた伝統という松の翠に恥じぬよう、みなさん一人一人、意義ある1年にしてほしいと思います。

■それでは、創立百周年の1学期の始業に当たり、2点話をします。

 ■1点目は、夏目漱石についてです。

 

 

 

 

 

 

 

 

■夏目漱石、本名・夏目金之助、英文学者、小説家、明治二大文豪の一人です。因みに明治二大文豪のもう一人は、『舞姫』の森鴎外。本名・森林太郎。

■みなさんは、漱石の小説で、何か読んだことはありますか。3年生は授業で『こころ』を読んだかな。

■『吾輩は猫である』『坊っちゃん』や、『三四郎』『それから』『門』の前期三部作、

『彼岸過迄』『行人』『こころ』の後期三部作などなど。

■校長は、高校2年の時読んだ、小説『草枕』がとても好きです。

■昭和59年から平成16年まで千円札の肖像画であったのは知っていますか。

 ■さらに、漱石の作品の中に『私の個人主義』というものがあります。小説ではなく、1914年(大正3年)、学習院の学生に対して行った講演を活字にしたものです。小説と違って漱石の主張がストレートに表現されています。読んでいると目の前に漱石が現れ、自分に話してくれているような錯覚に陥ります。みなさんも高校のうちに是非読んでみてください。

■『私の個人主義』の概要をお話します。

■第1次世界大戦の勃発する1914年の講演です。「国家主義」の理念が大変盛んになり、国家の利益のために生きることが強調されていた時代でした。

■世の中はそんな状況でしたが、漱石は「個性こそ発展させるべきである」という「個人主義」を主張します。

■以前、講道館柔道の創設者で東京師範学校(現・筑波大学)の学長を長く務めた嘉納治五郎の話をしましたが、漱石は嘉納治五郎に大変気に入られて、東京師範で英語の教師を務めます。その後、松山中学(現・愛媛県立松山東高校)の教師。この時の経験が小説『坊っちゃん』のモチーフとなります。次に第五高等学校(現・熊本大学)、そして、国費によるロンドン留学といった漱石が歩んだ人生を、振り返る形で話が展開します。

 

 

 

 

 

 

 

 

■その中で、漱石は今の世は「他人本位」に生きる人が多いが、自身は「自己本位」で生きてきたと語ります。そして、目の前の学生たちにも「自己本位」に生きるべきということを説きました。

■キーワードは「自己本位」。ものを考え、主張するならば、「その出発点は自らを拠り所として、主体的に頭を使って考えよ」そこから「自らの道を行き、目標を成せ」と。

■言い換えると、「思索の原点を「自己」を出発点にせよ」ということなのです。

 ■最近よく、「自ら問いを立てることが大事だ」と言われますが、これと同じだと思います。

■本校の重点目標の1は「主体的な学びの実現」ですが、これも同じです。

■みなさんの中に、生徒とは先生から勉強を教えてもらうものと考えている人はいませんか。

■その考えは、漱石から言わせれば「他人本位」ということになります。「学び」というものは、与えてもらうものではなく、自らつかみに行くものなのです。そのことを漱石は110年以上前から私たちに説いていたのです。是非とも漱石の言葉を受け止めてみてほしいと思います。

 

■2点目は、創立百周年の本校が大切にしている言葉「凛として輝く」についてです。

■本校では様々な場面で使われる言葉ですが、その意味をもう少し深めておきたいと思います。

■みなさんが「凛として輝く」のはどこでしょうか。それは「社会」です。3学期修了式にも言いましたね。みなさんは本番の舞台である「社会」で凛として輝き、学校は、そのためのリハーサルだと。

■社会で凛として輝くということを別の言い方をするとすれば、「independence」「自立」するということです。「自立」と一言で言っても、身体的自立、経済的自立、社会的自立、精神的自立など、いくつもの意味を含みますが、最終的には全ての自立を果たさなければなりません。リハーサルである在学中に、意識して一歩ずつ成長していってほしいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

■以上、1学期始業式に当たり、2点話しました。1点目は、漱石の「自己本位」と主体的な学びについて、2点目は、「凛として輝く」と自立についての話でした。

 ■さて、いよいよ創立百周年の令和7年度がスタートします。みなさん一人一人が意義ある1年になるよう「自己本位」で、主体的に取り組んでくれることを大いに期待しています。

■本日、午後は入学式が挙行され、みなさんの後輩となる新入生を迎えます。よきメンター役として様々な場面で助けてあげてください。よろしくお願いします。 以上です。

令和6年度 第3学期終了式 校長講話

 

 

 

 

 

 

 

 

■1・2年生のみなさん、おはようございます。校長の黒田です。

■今日はまず、先日の卒業式についてお話します。先日の卒業式は、心のこもったとてもいい式典になりました。卒業生はもちろんのこと、在校生のみなさんの立ち居振る舞いも素晴らしかったです。

■式中の緊張感ある静寂、見事にそろった起立・着席、涙の在校生送辞、心を込めて歌った式歌、そしてまっすぐに整えられた座席。どれもこれも一つずつ心があって、あの素晴らしい卒業式が出来上がったのだと思います。在校生のみなさんが果たしてくれた役割はとても大きいものでした。改めて感謝したいと思います。どうもありがとう!

■校長式辞の中、来年度の本校創立百周年について述べた部分で「松樹千年の翠」という言葉を紹介しました。松の樹は常緑樹ですから、百年千年と変わらず緑をたたえ続けます。

■みなさんの胸の校章は、体育館へ向かう渡り横の「三本松」がモチーフなのですが、その三本松は百年間、常に変わらず緑をたたえ、我々を見守ってくれています。

■常に変わらぬ緑というのは、松山女子高校がしっかりと守り続けてきた、よき伝統の象徴です。みなさんが卒業生から直接受け継いだもの、緑をしっかりと守ってください。よろしくお願いします。

 

 

 

 

 

 

 

 

■さて、前置きが長くなりましたので、修了式に当たり1点だけ話をします。

■内容は、みなさんが卒業するまでにしっかりと身に付けなければならないもの「コミュニケーション力(りょく)」についてです。

■みなさんが凛として輝き活躍すべき舞台は「社会」です。学校というところは本番前のリハーサルのようなものです。本番である「社会」で最も重要なのが、この「コミュ力」といってもいいでしょう。ですから、リハーサルの高校時代にしっかりとこの「コミュ力」を磨いておいてください。

 ■コミュ力のいろはの「い」は、いつも言われていると思いますが、挨拶です。今日は、いろはの「ろ」を教えましょう。それは、間違えたときには謝る、そして謝られたら許すということです。

■あくまでも間違えたときですが、人はよく間違えます。本当に自分は間違えてないか自分に矢印を向けてみてください。間違っていなければ、謝る必要はありません。

■もしも、間違えていたら、心から「申し訳ありません」「ごめんなさい」と言いましょう。言われた方は、許すべきです。これが、人と人との関係、コミュニケーションの、いろはの「ろ」です。

 ■最近「カスハラ」という言葉を耳にします。「カスタマー・ハラスメント」。

■お店の人に大声で怒鳴っているお客さん、役場などの窓口で理不尽な要求をする市民など、「カスハラ」に該当かな。その怒りはどこから来るの?と思います。善し悪しだと思いますが、私は年を重ね「怒り」というものが滅多に顔を出さなくなりました。

■「カスハラ」の可能性のある人が、よく「謝ってほしい」と言いますが、謝るってそういうものでしょうか。そして、その人は謝ったら許してくれるのでしょうか。是非とも矢印を自分に向けたいと思います。

 

■さて、各学年ともに既にフロアも移動し、4月にはそれぞれ一学年進級します。よき先輩として新入生を迎えてあげてください。そして、残りの高校生活を大切に、しっかりと学んで着実に成長自立してください。1年間よく頑張りました。お疲れさまでした。

令和6年度 第77回卒業証書授与式 校長式辞

 

式辞

  校門をくぐった先に紅白の梅の香り漂い、木々の蕾もほころび、この箭弓の杜辺に春の息吹感ずる今日の佳き日に、御来賓並びに卒業生保護者の皆様の御臨席の下、埼玉県立松山女子高等学校、令和6年度 第77回卒業証書授与式をかくも盛大に挙行できますことは、卒業生はもとより在校生そして私たち教職員にとってこの上ない喜びであります。

  本日、御臨席を賜りました御来賓のPTA後援会の皆様には、日頃から本校教育に御理解と御協力を賜り、さらに本日巣立ちゆく卒業生の門出に華を添えていただきましたことに心より御礼申し上げます。

  また、保護者の皆様におかれましては、御息女の今日のこの成長した姿に感慨もひとしおのことと存じます。御卒業まことにおめでとうございます。

 

 只今、卒業証書を授与しました308名の卒業生のみなさん、卒業おめでとう。

本校所定の教育課程を無事終了し、めでたく卒業の日を迎えることができたのは、一人一人がたゆまぬ努力を積み重ねてきた結果であることは言うまでもありません。その努力に改めて敬意を表します。よく頑張りました。

  同時に、その頑張りを陰で支えてくれた周囲の方々への感謝の気持ちを決して忘れてはなりません。特に保護者の支えなくしては本日を迎えることはなかったはずです。その無償の愛に対して、今日は是非とも自身の言葉で感謝の意を伝えてみてはどうでしょう。少し気恥しいかもしれませんが、気持ちを言葉で伝えることはとても大事なことです。

  また、手前味噌になりますが、三年間叱咤激励を続けた担任や教職員の存在も忘れないでほしいと思います。口うるさく、うっとうしいと思ったこともあるのではないかと思いますが、君たちにとって耳障りなことを言ってくれる人が、実は一番心配してくれている人だということを心の片隅に留めておいてください。

  私は、今年度着任し卒業生のみなさんとは1年間でしたが、校長として見守ってまいりました。始業式や終業式。また、松女祭や体育祭。さらには、委員会や部活動の用事で校長室に来てくれた時など、みなさんと接する機会は多くはありませんでしたが、校長なりにみなさんを思い、メッセージを発してきました。本日は、卒業生のみなさんに餞として、最後にメッセージを二つ送りたいと思います。

 

 1つ目は、「「凛として輝く」に自信を持ってほしい」ということです。

 今日、グローバル化、深刻な人口減少、気候変動、国際社会の混乱など、困難な課題の多い時代となりました。また、AIやICT技術が高度に発達した「Society5.0」の到来により、社会が劇的に変化することは明らかです。みなさんは、今まさにその真っただ中にいると言えます。今後、その課題多き時代と激しい変化に戸惑い、悩み、迷うことがあるかもしれません。

  しかし、そんなときは、松女の魂ともいうべき言葉「凛として輝く」を思い出してほしいと思います。この言葉には、知性あふれ、強い芯があり、品格を身に付けた人物に成長するという意味があり、みなさんはこの松山女子高校でこの言葉を胸に、三年間、勉強に部活動に打ち込んできたのです。ですから、みなさんの体の真ん中には、この「凛として輝く」が柱のように通っているはずなのです。

 そして、みなさんは決して一人ではありません。本日、ここに同じく「凛として輝く」を柱にした308人がおりますし、さらにこの精神受け継いだ二万六千人もの先輩方が皆さんの行く先で待ってくれています。

 仲間もいます。「凛として輝く」も柱になっています。そのことに自信をもって進んで行ってほしいと思うのです。

 

 二つ目は、これは以前にも話したことがありますが、「主体的な学びの実現」ということについてです。

 これは、本校の重点目標にも掲げているものですが、単に学校の中の目標にとどまらず、社会で生きていく上でも重要になってくるものですので、もう一度話しておきたいと思います。

  「学びというものは、自ら主体的に取りに行かなければならい、受け身ではダメ」と始業式や終業式で話したことがあったと思います。そして、それを「好きこそものの上手なれ」と言い換えたと思います。好きになったことなら、いくらでも時間を費やせるし、また、苦労を感じないし、むしろやっていて楽しい。この境地が学びの真髄なのです。今から七百年以上も昔の吉田兼好の言葉です。

  卒業生のみなさんの目の前に広がる世界は、穏やかな凪ではないかもしれませんが、受け身ではなく主体的に、そして「好き」になりながら力を発揮していってほしいと願っています。きっと人生が豊かになることと思います。

  以上、餞として2つお話ししました。

 

 結びになりますが、御案内のとおり、みなさんが巣立ちゆくこの松山女子高校は、来年度創立百周年を迎えます。大正15年の開校以来、大正、昭和、平成、そして令和と百年もの間、勤勉、勇気、気品、誠実、忍耐、感謝といった変わらぬ価値を大切に受け継いできました。卒業生のみなさんもその一人となるのです。

  「松樹千年の翠」。松の樹は常緑樹ですから百年、千年と常に緑を称えてくれるという意味です。禅の歴史を綴った11世紀中国の「天聖広燈録」の一節で、茶道でよく用いられる言葉です。本校が百年もの間、受け継いできた変わらぬ価値というものは、この松の翠そのものです。

みなさんの卒業後も、松山女子高校は「凛として輝く」と松の翠のように「変わらぬ価値」を、次なる百年、そして千年と受け継いでいく所存です。残る教職員一同、そのことをみなさんにお誓いいたします。

 

 それでは、卒業生のみなさん、いよいよ別れのときです。卒業生のみなさんの幸多き未来を心より祈念して「式辞」といたします。

 

 令和七年三月十三日

           埼玉県立松山女子高等学校長 黒田 勇輝

令和6年度 第3学期始業式 校長講話

 

 

 

 

 

 

 

 

■新年あけましておめでとうございます。みなさん健やかに新年を迎えられたことと思います。とはいえ、インフルエンザが流行っていますので大丈夫でしたか。1年生は終業式の前日、学年閉鎖になってしまいました。新年は無病息災で行きたいですね。

■無病息災といえば、昨日1月7日は「七草の日」。「せりなづなごぎょうはこべらほとけのざすずなすずしろこれぞ七草」。この春の七草を入れた御粥を食べ、無病息災を願うという日ですね。七草粥食べましたか。私は昨日、松山女子高校のみなさんの無病息災を願って、いただきました。みなさん、新年も健康に留意してよい年になるよう勉学に部活動に励んでください。

 

 

 

 

 

 

 

 

■さて、年の始め、また今年度の締めくくりである3学期のスタートに当たり、私から2点、話をします。

■1点目は、脳科学の話です。今、世の中ではSTEAM教育が必要だと言われています。Science、Technology、Engineering、Art、Mathematics、それぞれの頭文字をとってSTEAM。つまり、理数・デジタル+芸術の分野の人材が欲しいということです。私はこてこての文系ですが、これからの世の中は、文系一辺倒では通用しません。Scienceに大いに興味を持ってください。

■そういった意味で脳科学の話です。といっても難しい話ではありません。効果的な勉強法の参考程度に聞いてください。東京大学大学院薬学系研究科の池谷裕二教授の講演を以前聞いたことがあって、その内容をみなさんに少し紹介したいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

■みなさんは、「やる気スイッチ」は知っていますか。かつて、どこぞの塾のCMで使っていたワードです。「やる気スイッチ」ってなかなか入らないんですよね。体のどこかにそんなスイッチがあったらなあと思います。

■脳科学は、その「やる気スイッチ」突き止めました。具体例として、勉強する場合で考えてみますね。本格的な勉強をしようとするとき、案の定「やる気スイッチ」が入りません。そんなとき、まず簡単な作業をするのです。あまり頭を使わなくてもいいような作業。例えば、漢字を10個書くとか。そうすると、徐々にスイッチが入っていくということです。脳科学では、それを「作業興奮」というそうです。脳のウォーミングアップのようなものなのでしょうか。脳科学的には、それが「やる気スイッチ」の正体となります。

■次は、勉強部屋に「必勝」とか「〇〇大学合格」とか貼っておくことで実際に成績が上がるのかという話。違う言い方をしますと、「がんばれー」「がんばれー」という「応援」に実際意味があるのかということです。脳科学的には、これ効果があるようなんです。

■脳科学の研究者が次のような実験をしたそうです。被験者にコンピュータゲームを応援ありと応援なしで行ってもらうと、応援ありの方がよい結果が得られたということです。

■だとすると、年の始めに「書き初め」で1年の抱負を書いたりしますが、それも脳科学的には効果があるということになりますね、

■脳科学の話のラスト。同じテスト問題の表紙の色を、赤、青、黄など、色を変えてたくさんの被験者にやってもらったところ、一つだけ平均点が低かった色があったそうです。何色でしょうか。答えは赤です。集中力が下がるのでしょうか。はっきりとした理由は定かではありませんが、赤色とパフォーマンスには相関関係があるということです。だとすると、大学入試過去問題集の「赤本」は「赤本」でよいのでしょうか。

■また、みなさんの勉強部屋のカーテンや壁紙の色は何色ですか。ピンクとかではありませんか。大丈夫ですか。

■因みに、パフォーマンスが上がる色はあるのか?そういう色は特にないようです。

■以上、脳科学の話でした。興味をもった人は、脳科学の本、読んでみてはいかがでしょうか。脳科学の手法を取り入れた効果的な勉強法が見つかるかもしれません。

 

■さて、2点目は、年末の終業式での校長講話について、少し補足やら確認やら。

■2学期の終業式では人生を豊かに生きていく上で重要なことの一つである「経験・経験値」という話をしました。1年生は欠席者も多かったので聞いてない人もいますね。HPに掲載してありますので、是非見てみてください。

■内容をざっくりとおさらいしますね。繰り返しになりますが、人生を豊かに生きていく上で「経験」というものはとても大事である。高校生は高校生なりの経験が必要なのだが、近年は親が先回りしてなんでもやってしまうので、年相応の経験が足りない者も少なくない。

■さまざまな経験が必要なのだが、ほめられること、叱られることについては少しコメントを加えた。ほめられることは重要だが、親にほめられるのが必要なのは小学生まで。高校生ともなれば、社会からほめられることが大事。その心は、「自己有用感」。叱られる経験も重要。さらにいうと、叱られたときどのように自らを律することができるかという経験。叱ってくれる人の存在は大事。叱ってくれる人というのは、あなたたちを大切に思っている人。お父さん、お母さん、先生を尊いと思ってほしい。

■失敗の経験も大事。難しいことに挑戦したから失敗がある。挑戦しない人には、失敗もない。

■ざっとこんな話をしたんだと思います。

■ここで、この話の確認を一つ。ここからが本日の本題です。人生を豊かに生きていく上で経験が大事と言いましたが、その舞台となるところはどこですか?そうです。みなさんが近々デビューする社会です。みなさんが、「社会」で「凛として輝く」ために、経験が必要だということです。

■生徒・保護者、教職員が実現に向けて一丸となるべき、第一目標である本校の「目指す学校像」は、「社会で活躍する「凛として輝く」女性を育て、地域の期待に応える進学校」です。ここに松山女子高校の存在している意義があるのです。

■つまり、社会で凛として輝くために、みなさんはこの松山女子高校でたくさんの経験を積んでいるのです。そのことを自覚して、日々を大切にしてください。

 

■次に、補足を一つ。社会で凛として輝くために、松女生のうちに身に付けておくべきスキルを紹介しましょう。

■社会に出ますと、自分の好き嫌いに関係なく、多様な他者(様々な特徴を持つ人たち)と仕事をすることになります。そのような多様な他者とうまく関係を築きながらやっていく上で経験が重要なのですが、そこで大事な2つのスキルがあります。

■1つ目は、分からないときに、人に「教えて」と頼む「人に力を借りるスキル」。

■2つ目は、困っている人を放っておかずに声をかける「人に力を貸すスキル」。

 

 

 

 

 

 

 

 

■高校時代も少なからず同じですが、社会に出たら仲間と協力して一つの仕事を成し遂げなければならない場面が、より一層出てきます。いろんな性格のいろんな人がいて、そういう人たちと協力しながら、上手くやりながら仕事をしていくのです。このとき必要なのが、この2つのスキルなのです。

■社会に出て急にできるようにはならないので、今のうちに身に付けておいてください。日々の授業や部活動で訓練する場面はたくさんあります。是非ともみなさんでこのスキルアップに挑戦してください。そうすれば、大事なスキルが身に付くほかに、3学期が終わるとき、更には高校3年間が終わり卒業するとき、母校は更に愛しいものにもなっているはずです。

 

■以上、大きく2点。1点目は、脳科学の話。2点目は、2学期終業式で話した「経験」の話の補足として、「人の力を借りるスキル」と「人に力を貸すスキル」について話をしました。

 

■今年は松山女子高校にとって大切な創立百周年です。単にお祝い事をするだけではありません。松山女子高校が伝統を受け継ぎ、生徒一人一人が生き生きとして、そして楽しく、日々成長している姿を地域や社会に示していくことが、現役生のみなさんの使命だと思います。是非ともよろしくお願いします。

■また、今年度を締めくくる3学期です。それぞれが悔いのない3学期にしてください。

■以上で3学期始業式の校長の話を終わります。

令和6年度 第2学期終業式 校長講話

 

 

 

 

 

 

 

 

■みなさん、おはようございます。校長の黒田勇輝です。

■長かった2学期も本日で終了です。2学期は、松女祭や体育祭、また、2年生の修学旅行など、多くの学校行事がありました。思い出がよみがえります。さらに、それぞれの部活動も大いに活躍しました。大変良く頑張りました。行事や部活動を含め、この2学期、生徒のみなさんはたいへん多くのことを経験し、そして成長できたことと思います。お疲れ様でした。

■みなさんが学校生活で様々な経験を重ねている最中、学校には地域の方々から様々な連絡が入ります。10月末に、とある女性からこんな連絡が入りました。

■その日、東武東上線が事故の影響で止まってしまったそうです。その方は足を骨折されていて、長時間車内に閉じ込められたため、具合が悪くなってしまったそうです。そんな時、松女の生徒が「大丈夫ですか」「辛かったら体を預けてください」と声をかけてくれたとのことでした。その行為が本当にありがたかったと。名前を聴くこともできず、失礼をしたけれども、松山女子高校の生徒さんだったのでとお礼の電話をくださいました。

■実は、もう1件、似たような話。これは最近で12月17日の朝のこと。松女の前のとおりで年配の女性が自転車で転倒してケガをしていたところに、とおりがかった松女生2名が救急車を呼んだり、救助の対応をしてくれたりと、本当にありがたかったとのこと。お礼の電話がありました。

■ともに素晴らしい行動でした。校長からも感謝を述べたい。ありがとうございます。

 

 

 

 

 

 

 

 

■1学期の終業式で私は、「校長の座右の銘」として「義を見て為さざるは勇無きなり」という話をしました。論語の中の言葉で「人としてなさねばならない正義と知りながら、それを行わないのは真の勇気がないからである」という意味の言葉で、私が目指す生き方なのですが、なかなか難しいものです。

■今お話しした2つの松女生の行動は、まさに「真の勇気」の行動であり、「凛として輝く」行動だと思います。

 

【一部省略】

  

■それでは2学期に終業に当たり、1点だけ。先ほどから何度も出てきているキーワード、人生を豊かに生きていく上で重要なことの1つである、「経験・経験値」ということについて話をしたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

■みなさんは今までそれぞれの人生を、さまざまな経験を重ねながら生きてきたと思います。16歳は16歳なりの経験をして、17歳は17歳なりの、18歳は18歳なりの、年相応の経験が必要です。高校1年生が58の校長と同等の経験はできませんね。その反対に、高校生が、10歳くらいの小学生と同じくらいの経験値ではまずいですね。近年は少子化のため、過保護になる家庭が多く、親が先回りしてなんでもやってしまうので、他人事ではなく、経験値が低い高校生が増えているようです。

■それでは、我々にはどのような経験が必要なのか。楽しいこと、つらいこと、ドキドキすること、悲しいことなど、このような感情が沸き上がるような経験。また、チャレンジすること、失敗すること、成功すること、友達と協力すること、ケンカしてしまったことなどの行動。そして、その結果、褒められること、叱られることなど、全ての経験が自分の人生の糧になるのです。

■その中でも、最後に述べた褒められることと叱られることについては、もう少し詳しくお話しします。

■人間にとって褒められることはとても重要です。ただし、お父さん、お母さんから「いい子だね、いい子だね」と褒めてもらうのが必要なのは、小学生までかな。高校生ともなると更に上のレベルの、「社会に役立って褒められる」という経験が必要なのです。その心は・・・、「自己有用感」です。自分は誰かの役に立っている、貢献しているなど、自分の存在が有用であると思える感情のことです。

■そのためには、家庭や学校の中で完結するのではなく、みなさんが近い未来に活躍する地域や社会とつながることが重要です。その中で、自分が地域や社会に貢献できることがあるはずです。それが見つかって貢献できる行動をとったとき、社会はみなさんを褒めてくれます。具体的に褒められなくとも、自分自身が社会にとって必要な存在であるということを実感します。それが自己有用感です。

■叱られるという経験も、また大事です。叱られるときというのは、失敗したり、過ちをおかしてしまったりしたときで、気持ちのいいものではありませんが、そのとき、自分をどう律することができるかということが、人の成長に大きく左右するのです。こういうとき、開き直ったり、ふてくされてしまったりする人は駄目ですね。

■過ちをおかしてしまったとき、あなたを叱ってくれる人がいますね。その人はあなたのことを大切に思っている人です。見ず知らずの人は、決して叱りません。ですから、あなたを叱ってくれる人がいたら、その人を大切に思ってください。感謝してください。尊いと思ってください。

■失敗の経験も大事です。難しいことに挑戦(チャレンジ)したから失敗があるのです。ですから、「失敗」は、「挑戦」した人にだけに与えられた権利とも言えるでしょう。挑戦しない人には、失敗も成功もないのです。人は、挑戦して、失敗したり、成功したりという試行錯誤の経験の中で、何かを発見し、身に付け、成長できるのではないでしょうか。

 

■さて、今回目の前に突然現れた「正義」を行うべきタイミングに、勇気を振り絞ってそれを実行し、社会に大きく貢献した「真の勇気」ある松女生の行動に感じ入って、「経験」という話をしました。みなさん、2学期、たいへんお疲れ様でした。

■今年、甲辰(きのえたつ)の年も残りわずかです。来年はいよいよ、松山女子高校にとって大事な創立百周年の年を迎えます。新年が松山女子高校にとってよい年になるよう、また、みなさん一人一人にとって意義ある年になるよう祈念して、2学期終業式の校長の話といたします。

■みなさん、よい年をお迎えください。

令和6年度 第2学期始業式 校長講話

 

 

 

 

 

 

 

 

■みなさん、おはようございます。長い夏休みも開けて、いよいよ2学期のスタートです。

 

■私は、1学期の終業式に「有意義な夏休みを過ごして」と話しましたが、どうでしたか。

青春真只中の高校生のみなさんにとっては、勉強と部活動に全力で打ち込むこと、そして、さまざまな体験が「有意義」と言えるでしょうか。

■夏休み中の学校での様子から、部活動にしっかり取り組んでいたことは分かりますが、勉強の方はどうですか。しっかり取り組めましたか。時間だけが物差しではありませんが、勉強時間は大事な要素です。1、2年生は1日5、6時間、部活動を引退した3年生は、受験生なので1日10時間?さすがは松女生です。みな有意義な夏休みを過ごしたようですね。

■私もちょっとは勉強しましたよ。このくらいの厚さのある教育に関する実践書や理論書を読んで、他県などのさまざまな校種の先生方とグループセッションして、その後レポートを3本、A4で12ページ分書きました。400字詰原稿用紙にすると35枚分ぐらいかな。みなさんに「主体的な学びの実現」と言っている校長が、主体的に学んでいないとね。

 

■さて、本日の校長の話のフレームですが、夏季休業中にあった主な出来事についての報告やお礼を簡潔に4点。そして、校長講話を1点。

 

 

 

 

 

 

 

 

■では、報告等の1点目は「本校生徒募集への貢献に感謝」です。

■夏休みに入る前から学校案内を出身中学校に持って行ってくれた生徒諸君、また学校説明会の運営に携わってくれた生徒諸君に、校長として心より感謝を申し上げたい。本当にありがとう!生徒のみなさんが関わってくれるのは、とても効果的だし、またみなさんにとってもよいことなのです。是非とも今後もお願いできればと思います。よろしくお願いします。

 

■報告等の2点目は、「豪雨によるHR棟冠水について」です。

■8月7日(水)夕方からの豪雨で本校のHR棟1階が冠水しました。災害時の対策本部長である校長は、状況把握、対応の指示などを行い、安全を確認後、その日は対応を終了。翌日は学校にいる教職員と生徒たちで水のかき出し作業を行い、何とか午前中に復旧作業は終了しました。それもこれも、びしょ濡れになりながら手伝ってくれたみなさんのお陰です。校長として心より感謝を申し上げます。みなさん、本当にありがとう!

■実は、8月29日(木)も事前対策をしてあったのですが、再び浸水してしまいました。

その翌日も復旧作業を手伝ってくれたみなさん、本当にありがとうございます。

 

■報告等の3点目は、「HR棟冠水」に関連しますが、「同窓会からのお見舞金」についてです。

■8月7日の被災の状況を知った同窓会長さんが来校され、同窓会からのお見舞金を賜りました。本当にありがたいことです。心から御礼と感謝を申し上げます。

■同窓会からは日頃から、部活動で関東大会や全国大会に出場した場合に激励費を賜るなど、手厚い支援をいただいております。そのことも含めて共有し、みなさんで感謝したいと思います。

 

■報告等の4点目は、県立学校の男女共学化問題についてです。

■8月22日(木)、県教育委員会は、埼玉県男女共同参画苦情処理委員からの男女別学校の共学化を求める勧告に対して、その回答として報告書を提出したので、内容について、そのポイントを説明します。

■この報告書で、県教委は男女共同参画社会の中において、高校の3年間を男女が互いに協力して学校生活を送ることには意義があり、平成14年度の報告書に引き続き、共学化を推進していくとのことです。

■また、今後の県立高校の在り方について、総合的に検討する中で、主体的に共学化を推進するとの記載もありました。

■これは、今後、少子化により中学校卒業者数が減少すること、また急速なグローバル化の進展、デジタル技術の発展などによる教育のニーズが多様化していく中、男女における教育機会の均等を確保しながら、将来にわたり個人の能力と希望に応じた進学先の選択肢を用意するためということです。

■みなさんに協力いただいたアンケートについて、県教委は報告書の中で「男女別学校について、様々なニーズがあることが分かった」と言っています。

■このことを受けて、「今後も県民の意見を丁寧に把握する必要がある」と報告書にしっかりと明記されました。今後もアンケートや地域別での意見交換などを行っていくとのことです。

■さらに、その後行われた教育長の記者会見では、

・それぞれの高校には、それぞれの良さがあると考えている。

・生徒のみなさんが自身の学校生活について、とても大切にしようと考えていること。

・それは、別学校のみなさんにとっても変わらないとよく理解している。

・今後も高校生のみなさんには自分の学校を大切にして学校生活を引き続き楽しんで欲

しいと願っている。

・県教委は、高校生のみなさんをしっかりと支援していく。

とみなさんに対してのメッセージがありました。

■また、県教委はこの記者会見で、共学化する際には周知期間が必要であるとも言いました。

■以上、報告書と教育長記者会見の内容のポイントを説明しました。

■さらに整理していうと、「県教委は主体的に共学化を推進していく」とのことですが、「別学校にも様々なニーズがある」と。そして、「意見を丁寧に把握する必要がある、共学化の際には周知期間が必要」であるということです。

■私から一言、高校3年間というかけがえのない青春時代を今までどおり謳歌してください。そして、松女生はそれ得意ですよね。

■以上、報告等4点でした。この夏休みはいろんなことがあったので、報告等が少し長くなりました。

 

■最後に、本来の「校長の話」として、1点だけお話します。

■この夏は、パリ・オリンピックが開催され、世界中のアスリートが熱戦を繰り広げ、日本人選手の活躍に大いに盛り上がりました。私は柔道をやっていましたので特に日本柔道の活躍に大変感動しました。今はパラリンピックが開催中ですね。

■3年前は、史上2回目の東京オリンピックでしたが、初めて日本で開催されたのは、1964年の東京オリンピックでした。しかし、そこから遡ること28年。東京は既に招致を成功させていたのを知っていますか。日本の軍国主義が激しさを増す中で開催されることのなかった、後に「幻の東京オリンピック」と呼ばれる1940年東京オリンピックがあったのです。

 ■最終的には開催されることはなかったものの、世界情勢の圧倒的に不利な状況の中、世界中を駆け回り、東京オリンピック招致成功に導いたのは、嘉納治五郎という人物です。

■嘉納は、現在の筑波大学の前身である東京高等師範学校の学長を通算23年もの間務めた教育者です。学長当時、若くまだ無名であった夏目漱石を教員採用で面接し、とても気に入り是非ともうちに来てくれと言ったというエピソードが、漱石の「私の個人主義」に載っています。

 

 

 

 

 

 

 

 

■また、柔道を志した者なら知らない者はいない講道館柔道の創始者でもあります。講道館柔道とは、日本に古くから存在していた柔術の各流派をまとめ、青少年の教育のために作られたものです。その柔道が今や世界各国に広がっているのです。

 

■柔道の創始者であり、教育者の嘉納治五郎の提唱していた基本理念に「精力善用 自他共栄」があります。

■「精力善用」とは、日々の稽古で精進して身に付けた力は、相手をねじ伏せたり、威圧したりするために使うのではなく、世の中に役立つために用いなさいということです。

■「自他共栄」とは、文字どおり互いに信頼し助け合うことができれば、自分も他の人も共に栄えることができるということです。

■柔道は、相手がいなければ自分を磨くこともできません。他がいて初めて自らも精進し、磨くことができるのです。だから、柔道は「礼に始まり、礼に終わる」のです。正に柔道精神です。

 

■もう一度、嘉納治五郎の言葉を借ります。

 一 精力最善活用は自己完成の要訣なり。

 二 自己完成は他の完成を助くることによって成就す。

 三 自己完成は人類の基なり。

 

 

 

 

 

 

 

 

■みなさんが、勉学に部活動などに励んでいるのは、自己完成を目指す人生の修行なのです。何のために、そしてどのように自己を磨くか、言い換えると、何のために、どのように青春を過ごすのかを教えてくれる言葉です。

■さあ、内容濃い2学期がスタートです。来週は松女祭です。自己完成を目指して人生の修行を大いに楽しみましょう! 

 

 

令和6年度 第1学期終業式 校長講話

 

 

 

 

 

 

 

 

■みなさん、おはようございます。校長の黒田勇輝です。1学期の終業に当たり、2学期に向けて明日からの夏季長期休業を有意義なものにするため、私から2点、話をします。

■1点目は、本校の「目指す学校像」と「重点目標」についてです。

■世にある学校と名の付くものには、必ず「教育目標」や「学校目標」といったものがあります。学校が目指していくべき方向性を示した目標で、学校の第1目標です。

■埼玉県の公立学校では、これを「目指す学校像」と呼んでいます。10年ぐらいの長期のスパンを念頭に、実現を目指します。

■本校の「目指す学校像」は、「社会で活躍する「凛として輝く」女性を育て、地域の期待に応える進学校」というもので、今年で9年目を迎えます。校長として、とてもいい「目指す学校像」だと思います。来年度創立百周年を迎えるにふさわしい目標です。

 

 

 

 

 

 

 

 

■中身をよく見てみましょう。前半の「社会で活躍する「凛として輝く」女性を育て」には、松女がとても大事にしている「凛として輝く」が含まれています。この「凛として」という言葉は、「凛々しい」とか「引き締まっている」「しっかりしている」などといった力強い意味を持っています。

■つまり、前半部分は、社会に出てリーダーとして活躍できるように知性あふれ、強い芯があり、品格を身に付けた人物に成長していくということになります。

■この「凛として輝く」は、本当にいい言葉です。松女の生徒も教職員も誇りとすべき言葉だと思います。

 

■後半は、「地域の期待に応える進学校」。地域の方々は、松女を、そしてお隣の松高を、本当に愛してくれています。我々はその愛に育まれながら100年、この地で松女の魂ともいえる「凛として輝く」の精神を守ってきたわけです。

■しかし、地域の方々の愛に育まれているだけではだめです。地域に貢献できる学校としての使命が、この後半部には表現されているのです。

 

■この「目指す学校像」は、設定して9年目になりますが、今までこの「目指す学校像」を知っていた人はいますか?

■この「目指す学校像」を実現させるには、教職員だけではできません。いやむしろ主体は生徒のみなさんにあるのではないでしょうか。

 

■次に、この「目指す学校像」を実現させるために、4,5年スパンを念頭にした第2目標である「重点目標」というものがあります。ここにある4つが「重点目標」です。

■この4つのうち、1については、今年度、文言を変更しました。昨年度までは、こういう文言でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

■校長と先生方とで相談してこのように変更しました。内容は、ほぼ同様ですが、視点が変わったのがわかると思います。そうです。生徒の視点が入りました。

■「主体的な学び」を実現させるには、教職員の努力だけでは不可能です。生徒のみなさんの力も必要なのです。

 

■みなさん、「主体的な学び」の意味は、当然理解できていると思いますが、念のため確認しておきましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

■1学期の始業式で、2,3年生には「学力の意味」という話をしましたが、覚えていますか?「学力の意味」というのは、学校教育法に定義されていて、次の3つの要素からなっていますと。

■そして、この3番目の「主体的に学習に取り組む態度」というのが、これまで話してきた「主体的な学び」です。

■1年生のみなさんには、入学式の式辞で「好きこそものの上手なれ」という話をしました。この「好きこそものの上手なれ」が「主体的な学び」です。「主体的な学び」の意味は、大丈夫でしょうか。

 

■校長の仕事の一つに、「授業を見る」というのがありまして、1学期多くの授業を見ました。校長がみなさんの授業を見に来たという人、手を挙げて!(はい、どのHRも1回は行ったかな。)

■生徒のみなさんの取組の様子を見させてもらいましたが、多くの生徒が「主体的に学習に取り組む態度」であったと思います。みなさん、一所懸命授業に食らいついて、積極的に取り組んでいました。

■しかし、そのレベルでは、まだまだ「序の口」級です。では、最上級「大関・横綱」級は、どんなものか。それは「好きこそものの上手なれ」です。具体的にいうと、「国語って、本当に面白い!」と心の底から思えるような状態です。目指すべき「主体的な学び」は、その「大関・横綱」級です。

■では、本日は特別に「大関・横綱」級になるための秘訣を伝授しましょう。それは、失敗を恐れないことです。失敗したり、間違えたりしてもいいということです。いや、むしろ、間違えてください。失敗してください。

■失敗して、成功するといった試行錯誤の経験が、みなさんを強くし、「大関・横綱」級に成長させるのです。ここだけの話ですからね。

 

■生徒のみなさんにも「目指す学校像」と「重点目標」を意識して取り組んでいってもらいたいので、本日はこういう話をしました。特に「重点目標」1については、生徒と教職員により実現させましょう。

                  

■本日2点目の話は、校長の「座右の銘」についてです。私を知ってもらう意味で紹介したいと思います。

■みなさんご存知のとおり、「座右の銘」とは、自分を励ましたり、戒めたりするため、日頃から心に留めている言葉のことです。

 

 

 

 

 

 

 

 

■私の座右の銘は、「論語」為政にある「義を見て為さざるは勇無きなり」です。「人として、当然なさねばならぬ正義と知りながら、他人の前を憚り、自分の利害のみをはかって、実行しないのは、真の勇気がないからである。」という意味になります。

■新渡戸稲造が書いた「Bushido:The Soul of Japan」の中で、世界各国に紹介された日本の武士道精神ですが、その中の一つで、とても重い言葉です。こうあらねばならぬ、というよりは、こうありたいというもので、自身の生き方を戒めるべき言葉です。

 

■私の夢の話で、卑近な具体例を示します。

■ある日、電車の中で座席に座っていた私の前に、腰の曲がったおばあちゃんが現れました。私の中にある正義は「お年寄りには席を譲るべし」ですが、その日はくたくたに疲れていました。私は、寝たふりをして席を譲りませんでした。

■もし、こういうシチュエーションになったとき、しっかり自分の正義を実行できるかということです。できなければ、お前には真の勇気がないというわけです。名前が勇輝であるにもかかわらず。

 

■このフレーズの中の「義」とは、「正義」のことですが、では「正義」とは何でしょう。自分の中にある「正義」とは、いつからあるのでしょうか。

■「正義」とは、生まれたのと同時に自分の中にあるものではありません。育ってきた、生きてきた過程で身に付けたとものです。だとすると「知識」と似ています。

■みなさんは、今までいろんなことを学んできました。今も学んでいます。真理を極めんと学んでいます。その過程で、自身の中に正義という概念が生まれているのだと思います。

■真理や正義を学んだのであれば、それは単なる知識ではなく、行動に移さなければならないということなのです。広く言えば「知行合一」というのも同じ意味です。

 

■先ほどの夢の話では、私は勇気がないことになります。では、「勇気」とは何でしょうか。ここでいう「勇気」とは、心の強さのことではないでしょうか。つまり、正義を実行するには、心の強さが必要だということです。

■では、心の強さとは、なんでしょうか。心の強さは目には見えません。であるならば、心が強いか弱いか、勇気があるか無いかということは、どこで判断できるのかというと、実行したか、しなかったかということにならないでしょうか。

 

■少々、理屈っぽくなりましたが、まとめますと、私は、今まで生きてきた中で培った正しいと思うことは、行動に移していかなければならないということです。なぜなら名前が勇輝だから。みなさんにもこのようにしなさいという話ではありません。私だって、ろくにできていないわけですからね。

■しかし、前半で話した「主体的な学び」というのは私の中では、真理であり、正義です。

 

■それでは、明日から夏休みです。事故などに十分注意をして、自分にとって有意義な夏休みを実行してください。

 

離任式での校長挨拶

 みなさん、こんにちは。校長の黒田です。5/2(木)の離任式では、生徒諸君は離任された先生方のお話をとてもよく聞いていましたね。みんな前のめりでした。

 私も少々話をしましたので、載せておきます。

 

令和6年度 離任式・校長挨拶及び離任者紹介

■みなさん、こんにちは、校長の黒田です。

■みなさんとこうして会うのは4/8ぶり、2度目ですね。始業式と入学式ではじめてみなさんに話をしましたが、内容を覚えていますか・・・。覚えてなくて、いいんですか?!

いいんです!HPを見てください。

■さて、本日は離任式ということで、この後壇上の先生方を紹介しますが、その前にせっかくですので、少しだけ話をします。

■みなさんは「一期一会」という言葉を知っていると思います。文字を頭に浮かべてみてください。「一期」というのは、一生という意味で、「一会」とは、一回の出会いという意味ですね。今、この時の出会いは人生においてこの一回だけ、人生で最後の出会いであるということです。

■本日、この後離任された先生方が、お話をしてくださいます。2・3年生にとっては、お世話になった先生方との最後の出会い、最後の授業です。しっかりと何かをつかみ取ってください。

■1年生にとっては、初対面の先生方ですが、それこそ「一期一会」です。1年生も同様に何かをつかみに行ってください。

■茶道・お茶の世界では、この「一期一会」という言葉はとても大事な精神となっており、そして、更に奥深い解釈をしています。その解釈とはこうです。

■私はみなさんとこういう場で会うのは、2度目です。しかし、今日のこの一瞬の出会いというものは、人生において今一回だけのもの。だから、この一回の出会いを大切にしようというものです。

■ということは、みなさんが先生方と日々行っている授業も、その一回一回が常に「一期一会」ということになるわけです。

■では、離任された先生方を紹介します。・・・。